
カルト教団 × 音楽 × 14歳の少年少女
白痴の王の子どもたち
カルト教団でアザトースの奏者候補の子どもたちが……
概要
+-- とある高山地、人が住むにはあまりに過酷なその場所に、 カルト教団『白い揺籠』が村を作っている。 そこでは、アザトースの奏者を作り出すべく子どもたちを教育していた。 --+ シナリオ形式 第6版 舞台 アメリカのカルト教団『白い揺籠』 プレイ時間 ボイセ18-20時間程度 人数 4PL(秘匿HO制) ロスト率 中 推奨技能 <芸術(楽器演奏)>、探索技能、他職業技能参照 ※神話生物・呪文に対する独自の解釈 ※シナリオに悪意があります ※楽器は自由です 〈事前に知っておいていただきたいこと〉 PvPが発生する可能性が高いですが、あくまでRP上の対立であり、PL同士は仲良く協力し、PvPも折り合いをつけて進めていくことを強く推奨します。 RP重視であり、14歳の子どもたちが反目したり心を打ち解けさせたりしながら進んでいくような展開を想定しています。 〈ハンドアウト〉 ■共通ハンドアウト 君たちは、とあるカルト教団でアザトースの奏者となるべく教育されている14歳の子どもである。 君たちは、アザトースの奏者になりたい。 ■HO1:天賦 クラスの中で追随を許さない成績を誇っている。 最近さらに磨きがかかった。 HO3と■■■■■■■■■■■■■■■。 ■HO2:努力 誰よりも努力家でクラス2位の成績を持っている。 最近スランプだ。 HO1に■■■■■■■■■■■■■■■■■。 ■HO3:凡庸 あまり良い成績とは言えない。 最近別のクラスから移動してきた。 HO4を■■■■■■■■■■■■■■。 ■HO4:異端 上手とも下手とも言えず成績がつけられない。 最近スタイルを変えた。 HO2は■■■■■■■■■■■■■■■■。 〈事前情報〉 ■事前導入SS +-- 「ここからはぼくが案内しますよ、ヒッチコックさん」 そう言ったのは、OWIS(オウィス)と名乗る、そしてその名前を左足の甲に刻まれた少年だった。ヒッチコックは握手を求める。彼は手を取らない。そういえば、ここの子どもたちはとても手を大事にしているのだった。これはきっと正しい挨拶ではないのだろう。失礼、と言って会釈をする。 ヒッチコックは今日からこの白い揺籠で生活をすることになっていた。アメリカの片田舎に住んでいたが、仕事を失ったばかりだった。そんな折、縁の遠くなっていた友人から連絡が来たのだ。曰く、自分たちのいる村に来ないかと。 そこは、宗教で塗り固められた村だった。『白い揺籠』と言うらしい。アザトースという名前の神を信奉している。アザトースとは知性のない宇宙の王なのだそうだ。言っている意味は正直わからなかったが、村はアメリカの高地に存在し、下界との接点がひどく薄いらしい。だから、トラック運転手だったヒッチコックが生活物資の調達役にならないか、という勧誘だった。 正直下世話な興味もあった。狂信者、と言えば聞こえは悪いだろうが、とにかくカルトにのめりこむ人たちというのがどういう思想をしているのか、気になった。それに、報酬や生活の保証もあった。だから、引き受けたのだ。 そして今日、初めて村に入ったヒッチコックは村の案内を受けていた。中でも、『アザトースの子どもたち』と呼ばれる、特別に育てられている子どもたちの寮のことを知るべく、オウィスに案内されているということだ。 「気にしないでください。ぼくも事前にレイガーデン先生に言うべきことを教えてもらってはいるのですが、いかんせんここで暮らしていることは当たり前のことなので、ヒッチコックさんにとって突飛なことを言ってしまったらすみません」 「いや、そちらこそ気にしないでくれ」 「では……まず、ぼくが所属しているのはいくつかあるクラスの中の一つです。クラスごとに寮の中で暮らしていますので、他のクラスと顔を合わせることは一度もありません」 「一度も?」 「ええ、知りません。寮から出たことはありませんから」 淡々とした口調だった。それに何の温度も感じられなかった。 「そりゃ……つまらなくないかい?」 「いいえ、ぼくたちにはそんな暇はありませんから。ぼくたちはアザトース様の奏者になるべく、日々精進しなければいけないんです」 曰く、アザトースという神がいるところには、音楽を奏でるものがいるらしい。彼らは日々音楽の能力を研鑽し、贄にされる日を待ちわびているのだそうだ。 まったく、倫理的に問題のあることが初日から出てきたものだった。オウィスの言っていることは迂遠的ではあったが、要するに、宗教のために殺されるのだろう。それも、3ヶ月に1度のペースで、子どもが。 「ああ、でも」 と彼はふと思い出したように言った。 「第8学年になったら寮の外へ行くこともある、という話は聞いています。もちろん、村の外に行くわけではありませんが。テイクキーピングは気になります」 「テイクキーピング?」 「ぼくはあまり詳しく知らないのですが……罪を許すための儀式だそうです」 「……ふぅん」 首をかしげる。 「ぼくたちのクラス……子ども寮Cには今は10人います。14歳になったらアザトース様の贄になる資格を得るので、ここから御許へどんどん行くことになるでしょう。他のクラスのことは知りませんが……もし知ったとしても、ぼくたちには教えないでくださいね。あとは担任のレイガーデン先生と、最近副担任になったマグダレン先生がいます」 「その、贄のことについて、もう少し詳しく聞いてもいいかい?」 「はい。聞かされているのは、アザトース様の御許へ行く際は、ぼくたちの現世での名前を刻まれたこの左足を置いていくんだそうです。まだ、ぼくたちのクラスは資格を得たばかりなので見たことはないんですけどね」 「ふぅん……」 「ぼくはクラスでは3位の成績ですが、がんばれば早く贄になれるかもしれません。そのためにも精進しなければ」 視線をめぐらせる。 寮は簡素なものだった。『白い揺籠』という名前にふさわしく、ほとんどが白で構成されていた。まるで色があっては混ざり物になってしまうかとでもいうかのように。調度品といったものはほとんどなく、白い廊下に点々と扉が立ち並んでいた。 「ヒッチコックさん?」 「ああ、すまない」 「いえ。では、ぼくの部屋にご案内させてください」 こうして、ヒッチコックはこの陰惨たる、宗教に支配された村、『白い揺籠』で暮らすことになったのだ。 --+ +-- 「みなさんは崇高な使命を持った子どもたちなのです」 アガサ様の言葉は優しい。いつだって安心する毛布にくるまれるような気持ちになる。 白い揺籠の子ども寮C。僕たちは、ずっとこの大きな施設の中にいる。だから、白い揺籠全体を見なければいけないアガサ様に会うことができるのはほんのわずかな時間だけれど、その時間はいつだって嬉しい。僕たちにとって一番心地よい時間といっていい。きっと誰にとってもだ。 「白い揺籠の外は、悪意に満ちた世界です。人が人を蔑み、あざわらい、陥れることで価値を高めるような、そんな世界があります。私は、そんな世界を変えるべくこの白い揺籠を作りました」 子ども寮Cに所属している子ども全員、10人と一緒の寮に住んでいるレイガーデン先生とマグダレン先生、そしてアガサ様が、礼拝室に集まっていた。寮の中央で、アガサ様の話を聞くためだ。 「この世界、いえ、宇宙の中心にはアザトース様という、全ての神々の頂点に立つ尊いお方がいます。その方は大きな力を持っています。私は、アザトース様に救いを求めました。もちろん、みなさんだってそうですよね」 こくり、こくりと僕たちの中のあちこちから、頷くのが見える。僕だって、気がつけばそうしていた。だって本当のことだ。 「先ほども言った通り、この世界はあまりにも悪いことが多い。みなさんはこの白い揺籠の中で守られていますから実際にそれを体感したことはないでしょう。しかし、いつも私が言っている通りです。たとえば、差別というものがあります。同じヒトなのに、ただ肌の色が違うというそれだけで、一方的に悪口を言ったり、得られるべき報酬を得られないようにすることがあるのです。また、戦争というものがあります。別々の神を信じているからと言って、相手のことを否定して、たくさんのひとを殺すようなことがあるのです。まったく、おかしなことです。自分だけがいいと思い、他のひとのことはどうでもいいと思う。外の世界の人間はそういった悪い考えであふれかえっているのです。具体的な例は少しずつお話ししていますね」 『具体的な例』は、僕たちにとっては異世界の話すぎてびっくりすることばかりだ。『カイシャ』はひとがひとを使ってオカネというものをたくさん得ている。オカネはたくさんあればあるほどいいらしい……。そんなことをしなくたって、あるものをみんなで同じように分ければ、争いが起こるはずがないのに、そうなんだ。だからお互いを傷つけるようなことが起こってしまう。 「アザトース様は御前で音楽を奏でる奏者を欲している。ですから、私たちはアザトース様に奏者を捧げ、その代わりに私たちをお守りいただくよう、お願いをしているのです。みなさんは、その奏者となるべく、そのために日々、とてもたいへんな努力をして音楽の能力を研鑽していますね。すばらしいことです」 アガサ様の微笑みが深くなる。そうすると、よりいっそう、僕の中の嬉しいという気持ちが強くなる。 「奏者となれば、それは大変なおつとめでしょう。しかし、崇高な存在であるアザトース様に直接お仕えできるたいへん名誉ある役割であるとともに、白い揺籠、ひいては世界をも救う役割でもあるのです。奏者がいなくなれば、アザトース様の加護がなくなり、白い揺籠のひとびとは心がすっかり狂ってしまうでしょう。そして、悪い世界に侵略されて、すっかりなくなってしまうでしょう」 ゆっくりと手が広げられる。その手の中には、ここにいる10人がすっぽり入ってしまいそうなほど広かった。もちろんこれは比喩表現だ。でも、アガサ様の力はそれほどに強く、素晴らしいものなんだ。 「私は、アザトース様と交信し、みなさんをアザトース様のもとへ連れて行くとお約束しています。アザトース様も、それを期待されています。みなさんが来ることを楽しみとされているのですよ」 アザトース様の姿絵は、アガサ様の背後にある壁の上の方に飾られている。深い色で彩られた宇宙の中で、絵いっぱいにひろがったさらに深い色が不定形をつくり四方八方に伸びている。その下の方では太鼓や笛を持った人々がアザトース様に音楽を捧げているのだ。 「明日から新学期です。ようやく、あなたたちはアザトース様のもとへ行くことができる年齢になりました。私は、あなたたちの音楽が、アザトース様のもとで奏られていることを希望します」 ああ、早くアザトース様のもとへ行きたい。 その日の夜は、ずいぶん豪勢な食事だった。七面鳥の丸焼きや、ウォッシュチーズとトマトに交互に並べたカプレーゼやその他いろんな素敵なものが溢れている。ケーキだって用意があるらしい。全ては僕たちを祝福するためだ。第8学年は特別な学年だ。この年から、徐々にアザトース様の奏者へと送られていく。年に1人か2人、20歳になるまでには全員が送られるという寸法だ。順番は、優秀だったものからということになる。アザトース様の奏者としてふさわしいだけの能力を持つようになったものから……。 「さて、みんな。用意はいいか?」 レイガーデン先生がいつものように真面目な顔で言った。レイガーデン先生はあまり笑顔を見せないが、アザトース様と音楽への情熱はすさまじく、僕はとても尊敬している。そんな先生が色鮮やかなパーティー帽をかぶっているのは少しおもしろくて、笑ってしまった。先生だけじゃない。僕たちはいつも白い制服を着ているけれど、今日ばかりはいろんな色をしたパーティー帽を被せられている。特別な年だからといって。 これ、レイガーデン先生が考えたんですか? 誰かが聞いた。まるで全員の代弁をしたように思えた。本当に全員かはわからないけど、少なくとも僕の代弁ではあった。 「あたしよ。だって、お祝いなんだから、それっぽくした方がいいじゃない?」 かけている眼鏡の位置を直しながら言うのはマグダレン先生だ。もともと僕たちのクラスはレイガーデン先生1人が先生として僕たちを指導してくださっていたが、転入生である1人の子どもとともに、マグダレン先生が新たな指導者として入ってきてくださった。これだって、僕たちが特別な学年になったからなのだ。 「ああ。でも」 とマグダレン先生は少し声をひそめる。 「明日の夜はテイクキーピングが行なわれるから、こういう浮かれ方はちゃんと今日で区切らなければいけないけどね」 「そうか」 レイガーデン先生は表情を変えずに返した。テイクキーピング、言葉としては知っているが、僕たちは実際見たことがない。悪い魂をアザトース様の救済が来るまで少しばかり待機してもらう行為だと習った。これも実際に見ることができるというのなら、これも特別なことの1つだろう。 しばらく、レイガーデン先生とマグダレン先生の間で沈黙が横たわった。沈黙というのは、きっととても手が長いに違いないと思った。僕たちは食器を並べなさいと言われていたからそうしていたけれど、やがてそれも終わって、2人のどちらかが言葉を発するのを呆然と待っていることしかできなかった。 「お祈りをしよう」 レイガーデン先生が、巨大なおもちゃの眼鏡をつけながら言った。まったく、本当におかしくて、僕はちょっとばかり笑ってしまった。 「それはもちろん。ユークリッド、あなたが先導するのよ。ここの担任はあなたなんだから」 「ヘレーナ」 ユークリッドと呼ばれたレイガーデン先生はヘレーナと呼ばれたマグダレン先生に返し、少し眉をひそめた、と思う。何しろ眼鏡が邪魔で、眉がどうなっているのかよくわからないのだ。ともかく、レイガーデン先生は僕たちを全員食堂の席に座らせると、指を折って手を組ませた。 「……この食事はアガサ様に感謝をしなければならない。世界は悪で満ちているが、白い揺籠はその世界と繋がり、食料を手に入れなければ維持することができない。だから、アガサ様は危険を冒して世界と交渉し、なんとか俺たちの糧を手に入れていただいているのだ」 いつもの文句だった。僕たちはレイガーデン先生に続けて言う。ありがとうございます、アガサ様。 「アザトース様に奏者を送り続ければ、この問題も解決するだろう。白い揺籠のためにも、奏者は増え続けなければいけない。君たちが白い揺籠を守るため、まずはこの賜餐をいただこう。アザトース様のために」 僕たちは目をつむり、手を組んだまま、もう一度頭の中で呟いた。ありがとうございます、アガサ様。それから。アザトース様。いち早くあなたの御前に。 そうして、新学年を祝うパーティーをした。 --+ ■事前導入SS情報まとめ ・『白い揺籠』は宗教の村である ・『白い揺籠』はアザトースを信奉している ・『白い揺籠』はアザトースに奏者を捧げる代わりに自分たちを守ってもらっている ・アザトースの奏者になるために育てられている『アザトースの子どもたち』がいる ・『アザトースの子どもたち』はクラスごとに寮で暮らしており、寮から出たことはない ・3ヶ月に1度ペースで『アザトースの子どもたち』は殺されるのかもしれない ・テイクキーピングという『罪を許すための儀式』がある ・PCたちがいるのは子ども寮Cである ・子ども寮Cには10人の子どもがいる ・担任のユークリッド・レイガーデン、副担任のヘレーナ・マグダレンがいる ・子どもたちがアザトースのところへ行く時は、名前を刻まれた左足を置いていく ・アガサ曰く、『白い揺籠』の外は、『悪しき世界』である ・PCたちは『会社』や『金』のことをあまりわかっておらず、争いの種であると認識している ・アガサはアザトースと交信する能力を持っている ・PCたちは、本編開始翌日より『第8学年』の新学期となる ■作中用語 【白い揺籠】 アザトースを信仰する教団。 「世界は悪で満ちている。そこから脱した『我々』は山にコミュニティを築いている。このコミュニティはアザトースに奏者を捧げることによって、アザトースの保護を受けている。」という教えを持っている。 【子ども寮C】 PCたちが所属する寮。『アザトースの子どもたち』と呼ばれる子どもたちは、いくつかある寮の中でずっと暮らしている。今まで外に出たことはない。 【テイクキーピング】 「罪を許すための儀式」と呼ばれている。 ■楽器選択の制限 両足を使う楽器は禁止とする。1つのフットペダルなど、片足で足りるものであれば問題ない。 立奏をするものも構わない。 ■職業技能 PCの職業技能は以下のものとする。 ・<聞き耳> ・<宗教学(アザトース)> ・<図書館> ・<言語(ラテン語)>or<言語(古代ギリシャ語)>or<言語(サンスクリット語)> ・<芸術(楽器演奏)> ■PCの名前 定められた表(C-f-A_name.pdf)の中から選んでつけること。 1d100で決定してもよいし、好きな意味や音から選んでもよい。 ただし、PC同士で同じ名前にはならないこと。 ■PCの外見・服装 左足の甲に名前が入れ墨で彫られている。 また、服装は制服のみ着用することを許される。制服は別途資料(C-f-A_uniform.pdf)参照のこと。 〈公開NPC〉 ■アガサ・アキモト 白い揺籠の教祖。年齢不詳の美女で、常に微笑みをたたえている。 滅多に私的な会話をすることはないが、話しかける時はいつも穏やかな調子である。その私生活を誰も知らない。 ■ユークリッド・レイガーデン PCたちのクラスの担任。熱心な教育をしてくれる。少しいきすぎるせいで体罰を行ってしまうこともあるが、やってしまったあとはきちんと謝る。専攻はフルート。 ■ヘレーナ・マグダレン 最近PCたちのクラスにやってきた副担任。HO3のクラス担任だった。どこか気弱で常におどおどとしているところがある。ド近眼らしく、分厚いメガネをかけている。専攻はヴァイオリン。 ■ジョン・ヒッチコック 最近白い揺籠の生活必需品などのやりとりを外部とするためにやってきた調達係。あまり白い揺籠のことについては詳しくないが、気さくで明るい。音楽にはうとい。 ■オウィス クラスで現状3位の成績を持つ子ども。非常に美しい見目をしており、愛嬌が抜群にある。一方で負けず嫌いで、成績が3位であることには常に悔しんでいる。専攻はピッコロ。
- プレイ人数
- 4
- 想定時間
- 18-20時間
- 通称
- ノノドモ
- 価格
- 1200円
評価
- ロスト率
- ★★★★★
- ロールプレイ度
- ★★★★★
- ダイスゲーム度
- ★★★★★
- 悪意度
- ★★★★★
- KP難易度
- ★★★★★
- PL難易度
- ★★★★★
公開日: 2025年5月5日
更新日: 2025年10月30日